5 Starsに魅せられて

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蜘蛛女は愛に満ちた女だった

※役名を間違えていたので修正しました。大変失礼いたしました。

 

  昨日、渡辺いっけいさんと大倉忠義さんの舞台『蜘蛛女のキス』を観てきました。これまた当日券也。席はB席だったので、出費的にはありがたかったもののかなりの見切れ席。上手はほぼ見えずな場所でした。なるべくぼかして書きますが、ネタバレといえばネタバレします。ご了承ください。

 

  原作も映画も全く勉強せず、チラシでの簡単なあらすじだけで観に行ったこの舞台。『未成年に対する背徳行為で投獄された母親想いの中年』と書かれているものだから、どんなアブノーマル舞台かと思えば、実際に観てみた私個人の解釈は深い深い「愛」のお話でした。

 

  ヴァレンティンは若き革命家らしく、勇ましくていつも何かに反抗しがちな印象。根は素直だからこそ時々感情が抑えきれなくなる。でもそんな自分が嫌で、相手を傷つけることが何よりも辛いから自分自身も傷ついてしまう。そんな繊細な男。正義感も強いが故に、自分で作った正義に自分の感情が罰せられているところが切なかった。

  モリーナは本当に愛に溢れていた。その愛が何かと言えば、もちろんヴァレンティンへの「好意」もあってだけれども、強く感じたのは「母性」のような愛。「思いやり」の愛。そういう面ではどんな女よりも “女” だった。そして、どんなに傷つけられてもヴァレンティンを愛することをやめないところもまさに女だった。最後の最後にも自分ではなくマルタを登場させるところが健気だったけど、彼女にとってはそれがごく自然なんだろうと思う。

  一番笑いが起きてたシーンも私としては愛を強く強く強く感じてグッときた。それはきっと座席の関係でモリーナのコミカルな動きが見えなかったからかもしれない。それでも唯一のシャツを差し出したり、最後のハーブティーをためらわずに淹れたり(これは自分のためでもあったかも..笑)、お茶のためのお湯を迷いなくヴァレンティンのために使ったり。。相手のために出来ることはなんでもするモリーナの愛は強く心を打ってきた。 

  だからヴァレンティンも少しづつモリーナに心を開き、モリーナを気にかけるようになった。それは「借り」が嫌だという彼の性格からだけではないはず。あのシーンも単なるギブアンドテイク精神ではなく熱量の差こそあれど、情あってのことだと。

 

  例えば、(ありえはしないけど)この二人芝居が普通の性別の男と女の登場人物だったら、もう少し簡単なお話になるだろう。そうでしょう? 

  そして、モリーナが若くてもまた違う話になっていたと思う。若い男と “女” の話であればもう少し情熱的なお話だったかもしれない。 

  でも昨日見た舞台は、年代も趣味嗜好も接点のない二人が少しづつ心をかよいあわせて、お互いを理解し合い、支え合い、愛情を感じて、相手のためになりたいと願う本当の「愛」のお話だった。

  

  とても孤独を感じた時、側に誰かがいて話を聞いてくれる。それって当たり前じゃなく素晴らしいことなのかも。自分を気にかけてくれる人がいる、それって最高に幸せかも。

  「バカ言わないの」

  「怒るよ」 

  二人のさりげないこんな一言が、私にとっては「愛」の言葉に聞こえたよ。素敵な舞台をありがとうございます。 

 

 

 

  てか、、、オートミールが好きだなんて、モリーナは一回も言ったことないんでしょ?でもヴァレンティンは美味しそうにすぐ食べきるモリーナの様子を見てそう気づいたんだよね?それで多い方を「お前にやるよ」って、、、 

 

  惚れてまうやろーーー!!!!!