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『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の感想

  先日まで明治座で公演されていた舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』を少し前に観劇して参りました。まずは千秋楽おめでとうございます!

 

  観る前は、時代物が私めに理解出来るのかと不安しか無かったのですが、そんな不安もどこにいったものか、歌あり笑いありのものすごく素晴らしい舞台でとても素敵な時間を過ごさせていただきました。本当に楽しかったです! 

  少し前のことになるので記憶があやふやで、ところどころ間違っていたら申し訳ありませんが感想を書かせていただきます。 

 

 

  もうとにかく大地真央さん演じるお園が大好きでした。お園さんのような女性に憧れる。面倒見も良くて、誰とでも上手に関係を築けて、情も深くて、でも時々チャーミングな酒好きで、もう「好き」の要素しかなかった...!本当にお園さんのような姐さんになりたいと思いました。多分、もともと私が大地真央さん自身に好感を持っていたからその部分がお園さんにも強く反映されていたんだと思います。

 

  『亀遊』という密かに恋をする花魁が『亀勇』という攘夷女郎になっていく過程にだって、お園さんの人を楽しませたい粋な精神を感じて、あんなにも可愛がっていた亀遊の死を心の奥底では悲しみながらも、それに蓋をして明るく過ごしている姿がかっこいいなと思いながら観ていました。だからこそ終盤の緊迫のシーンで狼狽えるお園さんを観るのはなかなかバツが悪かったなー。。

  それでもやっぱり完璧な人などいないから、そんな危機一髪のシーンもなんとか命からがら切り抜けた途端、たくましく振舞うお園さんはもっともっとカッコよく感じました。腰が抜けて、見るからにカッコ悪い姿でひょうきんに「こわかったぁ〜〜〜」 なんて叫び、すぐさま酒に這い寄るお園さん、、どうして愛さずにいられようか...!

  その後はうって変わってお園さんが心の奥を歌に託してくれたのもまたぐっと心に響きました。

 

  ちなみに大地真央さん自身のことで私が(勝手に)恐ろしいな、と思ったことがあったのですが、それは観る者に委ねる演技をするという点でした。(とは言えこれは私が勝手に思っただけなので実際は本意かどうか、間違っているかもしれないけれど、、) 大地さんの立ち振る舞いには凛としていながらもこちらを笑わせるコミカルさがあるから、ひとつのシーンで読み取り方によっては笑うこともできるし、悲しくなることもできるように感じました。

  具体的にいうと、自身がした “脚色” が災いを呼び、問いただされる緊迫のシーン。私自身はその辺りは全く笑えなかったのだけれども、客席からは度々そこそこの笑い声が生まれていて、でも大地さんのお園さんを観ていると他のお客さんが笑ってしまう理由もわかるんだよなぁ、と思ったのでした。

  なんだか幅を持たせた、受け取り側が思い思いに楽しんでいいような、異次元のお芝居に感じて鳥肌が立ちました。

  、、、まぁ、これは本当にあくまで私個人が感じたことです。 

 

 

 

  そしてそして、お次は観劇第一の目的である浜中文一さんのお話。

 

 

  彼は一体何者なんだ!!!!! 

 

 

 

  す ば ら し す ぎ る ! ! ! ! !

 

   やっぱり文一くんが歌い出すと世界が変わる。

 

  優しくて、夢に向かって真っ直ぐで、英語もできて、医学にも精通している秀才で、歌えるし、舞えるし、その上美男子...。どういうこっちゃ!!!

  まーーー素敵な役でございました。

 

  序盤の藤吉さん(浜中文一さん)と亀遊(ヘレンさん、、*1もとい中島亜梨沙さん)の行燈部屋でのやり取りは初々しくて、「胸キュン」なんていう軽い言葉では表したくないぐらいに清々しい甘酸っぱさ。亀遊が本名のチエで呼んでほしいと伝えた時、読み書きのできない彼女の手のひらに藤吉さんが指で「チエ」と書いてみせるシーンはもーーーときめいた。わたし精神年齢14歳なんで。

  チエが自分で書いてみせた時「違う」と言ってガバッとあすなろ後ろハグしながらまた書いてみせる藤吉どんに宝塚みを感じたよー!あのシーン、最っっっ高でした!!! 

  恋仲のお二人の歌もまーーー素晴らしくて、文一くんの美しくも男らしい歌声と対照的な中島さんのか細く透き通るような歌声(病弱な役のため) がとても素敵で...!

 

   にしても、お園さんに二人で会っているのが知れてしまったから今後はここに来るのは控えると藤吉が言った時、チエがそんなこと言ったらイヤ!と言った趣旨のことを言っていて、素直な女ってめんどくさいけど、かわいいな、、って思ってしまった...。

 

 

  からのお座敷のシーンは事態が一変する、とにかく切ないシーン。。藤吉の仕事が通訳というのがなんとも酷い...。惚れた女の売った買ったを仕事として訳さなければならないなんて、そんな酷い話がどこにあるっていうんだい!!! 

  お座敷に出るようになればもう会うことはなくなるねと泣いて別れたその後に、あんな想像以上の悲劇が待っていたとは...。思いもしない展開に困惑しながらも藤吉なりの、出来る限りの虚しい抵抗が本当に切なかったです。

  そしてついに亀遊が自分の命を絶ってしまったと分かった時、真っ先に「チエ!!!」と叫んで部屋を出ていく藤吉の姿と、そんな亀遊を発見して一番悲しいはずのお園さんがなんとかイリウスを座敷に引き留めようとする姿が心に刺さりました。

 

 

  二幕の始めは藤吉が亀遊の幻影と舞うシーンだったのですが、、私は文一くんのああいった踊りを初めて観たので、SHOCKでのキレキレダンスや、フィフティシェイズ!でのコミカルなダンスとはまた別な、舞い踊る文一くんがそれはもう本当に美しく、本当にこの人はなんでも自分のモノにする、そんな努力ができる人なんだなぁと静かに感動しておりました。よっ!浜中文一世界一!

 

  その後のお園さんと藤吉のシーンも良くて、亀遊の死から75日経ってようやくあの二人が本心を語れる場ができたんだな、と思ったら、それまでの二人の悲しみや悔しさを考えてしまったり。。

  藤吉と亀遊の恋路を本当は応援していたんだよと、後悔まじりに訴えるお園さんを観てふと、『俺節*2とは逆の “姐さんの優しさ” だなぁと思いました。

 

  そんな中、あることないこと面白おかしく書かれた瓦版に二人の未来が影響を受けていくわけで、お園さんは語り手という、言ってしまえばエンターテイナーになっていき、一方で亀遊の死に対する後悔と自責の念に囚われていた藤吉は一人歩きする『亀勇』を見送り、行燈部屋のチエだけを胸に自身の夢に向かって旅立っていく、、。そんな藤吉の姿に、観ているこちらも「頑張ってくるんだよ」と親のような気持ちになってしまいました。 

 

  他にも印象的だったシーンがいくつかあって、お園さんが攘夷派の前で先生に習った歌を披露する前の、これから起こることがとんでもない事態になると分かっているあの緊迫感には本当に息が詰まりそうだったし、唐人口の花魁の登場シーンはビジュアルが衝撃的すぎて観劇しながら固まってしまったり。。(笑) それでも未沙のえるさん演じるマリアのプリティーさには内心キャッキャしながら観ていました♡ 

 

  今回は「音楽劇」としての上演ということで私のような素人でも純粋に楽しませていただける作品で本当に嬉しかったです。なにしろ当日まで知らなかったのですが、かの宝塚歌劇団の原田諒先生の潤色・演出で、宝塚OGの方もたくさん出演されていたとのことですもんね!それはどうしたって素晴らしい作品になるはずだ!うむ。

  最後の最後にも全キャストが舞台に登場し、ビシッと全員がキメポーズをして終わって(←これには名称があるのでしょうか..。伝わりづらいですね。。)、生まれてはじめてかっこよすぎて涙が溢れるという体験をしました。 

   コミカルなお芝居もふんだんに散りばめられていて最高のエンターテイメント作品の『ふるあめりかに袖はぬらさじ』本当に本当に楽しかったです。そして、お園さんのようにたくましく前向きに、周りの人を愛しながら生きていたいと思いました。

 

  文一くん、今回も素敵な作品に出演してくれて本当にありがとう。毎回文一くんが観たくて行くけれど、行く度に作品自体に感動して劇場を後にしています。

 

センキュー BUNCHAN!

  

 

*1:塚田僚一さん主演舞台『サクラパパオー』での中島亜梨沙さんの役名

*2:今年上演されていた安田章大さん主演舞台