5 Starsに魅せられて

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世界はBeautiful & Strange

  先日、今年最後の現場に行ってまいりました。シアタークリエの『DOGFIGHT』。私にとってはとても素敵な愛のお話でした。以下、コンコンと語り出しますので要注意※

 

  物語はベトナム戦争期。戦地へ向かう前夜の若い海兵隊員とある女の子のお話。そして戦争という、あってはならないものなのにずっと昔から、そして今でも全くなくならないものに巻き込まれた人たちの話。 

 

  戦争に行くということの本当の意味がまだきちんと認知されておらず、戦争に行くことはまるで度胸試しかのような、勲章を持って帰ることが一種のステータスだったような時代において、エディ・バードレイス(屋良朝幸さん)や仲間のボーランド(中河内雅貴さん) 、バーンスタイン(矢田悠祐さん)のような、ガサツでデリカシーもない無鉄砲な若者ってすごく多かったんでしょうね、きっと。人を思いやることなどはあまり重要ではなくて、むしろ図太く勇敢なタフガイとして任務を遂行する男こそが英雄だともてはやされていた。だからこそ、ああいうドツボアタマたちがまかり通るような世の中にした戦争は許せない。

  確かに戦場に行く前に男になりたいというシーンはいろんな戦争作品で見る場面だから、死が身近に迫る時、人間の自然な欲求として身勝手になる人も多かったのかも。野郎だらけの環境では、極端に言ってしまうと女はゲームの駒だったり、快楽のための対象で、ステージからしょっちゅう中指立ててくる彼らにこっちが中指立て返してやりたくなったけど(私の育ちの悪さがバレる...笑)、それは必ずしも彼らが悪いのではなく、そういう若者を育てたあの時代のせいなんだよなって思った。

 

  それでもそんな中で、海兵隊恒例行事のドッグファイトこと “誰の連れてきた女の子が一番ダサいか決定戦” のパーティーでローズ(宮澤エマさんの演じるヒロイン)を傷つけるのを躊躇ったり、結局傷つけてしまったローズにぶっきらぼうながら謝りに行ったエディの行動は本能的なそれであって、謝り方も知らなかった彼がローズと一夜を過ごす間に、今まで教わってこなかった優しい気持ちを “勝手に”*1 学んでいく過程がとても美しくて綺麗なものに感じました。

   初めてのデートを素直に喜ぶローズの純粋な気持ち、誰にでも優しい彼女の様子、食事を分け合う精神、そして素敵な歌と綺麗な歌声、、ローズのいろんな部分に触れてエディは人として大切なものを知っていく。

  ただ、それと同時にローズ自身もエディきっかけで彼からたくさんのことを教えてもらっていて、たくましくなること、一歩外の世界に踏み出してみることを学んでいた。

  親の経営するダイナーの片隅でひとりギターを鳴らして夢を見るだけだった女の子が、きっかけはなんであれ、男の子の誘いにイエスと答え、初めてのデートに踏み出せた。馬鹿にされていたと知ったときもただ泣いて逃げ出すのではなく、一発パンチをかましてやるたくましさはかっこよかった。しょうもない謝り方で呆れてしまうようなエディのキャッチアップディナーだってOKした理由が「孤独な惨めな女の子」のままでは終われないだなんて、内気な女の子だった彼女が新たな自分へと一歩踏み出す強い成長ぶり。予約もしていない高級レストランに嘘を並べてうまく入れてもらおうとすることも、橋の欄干に立ってみることも、自分の歌を人に聞かせることだってローズはエディに会わなければやらなかったかもしれない。そんな些細なことたちだって、彼女には新たな世界の扉だったように感じました。

  、、、ちなみに個人的な萌えローズポイントが、、謝りに来たエディに最初はおこだったのに、最終的には「パーティーで悪態をついたのは本気ではない」と、「あなたの身に良くないことが起こって欲しくないもの」なんて言うローズ。本当に愛おしかった〜!いい子すぎるでしょ!!

 

  全く相反する二人が再びちゃんとしたディナーでデートし直すシーンでも、あまりにも性格が正反対すぎて「なんでこんなことになっているんだ??なんで今、私は、俺はこの子とデートしてるんだ??」というお互いの様子がひょうきんで、むしろ理屈じゃなくて、心のどこかで本能的に一緒にいたくなるような相手に出会えたあの二人が、お互いに足りなかった部分を補い合っているあの二人がピュアラブ*2すぎてとっても素敵すぎて、そこで歌う “First Date / Last Night” が私的にはとてつもなく涙ボロボロのシーンだったのでした。いったいこのデートは何なの??私ったらどうしたの??みたいにローリングアイズしてるのに、口元がほころんでいるローズことエマちゃんがめっっっちゃ可愛かったです!!

   ちなみに、、ドッグファイトに行く前は、ドレスアップ(と言う名のドレスダウン??)してきたローズへの第一声「ワオ!」の表情とか、バーまでスタスタ先に歩く様子(特に上りの階段ではまじムカついた!!)が最低野郎なエディだったけど、そんな彼がバラ一輪を手にしてローズの家まで謝りにきたこと、そして外でローズに自分の上着をかけてあげたところでとんでもなくときめいたので、つくづく自分の単純すぎる夢見る少女ぐあいにうんざりもしたけど...(笑) 

 

 

   その後、、ガラッと変わって終盤にはエディといつもつるんでいる、ボーランドバーンスタインの二人がお互いの絆を再認識して強めるシーンがあるのですが、そこも何とも言えない切なさが詰まっておりました。

  普段は自分の中には微塵も存在しないかのように振る舞っている、漠然とした戦争への恐怖や不安、それがふと言葉として口から出てしまい、仲間としてお互いを助け合うと誓ったタトゥーショップでのあのシーンは、それまで傍若無人だった青年たちの弱さというか脆さというか、不完全さが垣間見えて、その分、その命が単なる駒のように戦地に送りこまれることが悲しかった。 

 

  翌朝、そんなそれぞれの夜を過ごした海兵隊員たちはジャンクフードやホームメイドパイ、流行りのテレビドラマといったお馴染みの日常に別れを告げ戦地へ向かう。その先では想像以上の地獄が待っていて、いつでも隣にいて当たり前だった仲間が次々と戦火を受け命を落としていく。最終的に生き残ったエディは抜け殻のようなボロボロの心でサンフランシスコに戻るのだけれども、久しぶりに帰った祖国はガラッと様変わりしていて、英雄として迎え入れてくれるはずだった守っていたと思っていた存在には憎まれ、忌み嫌われますます自分を見失っていく。そんな憔悴しきった彼がようやくローズのダイナーに戻ってこられた時、エディはずっと自分の中で渦巻いていた苦悩をローズに呟く。「どうして彼らだったのか。どうして自分じゃなかったのか。」

  帰還兵なら誰しもが思うこと。実際に経験していない者には分かり得ない苦しみだとは思う。それでも、そんなエディの苦悩に対するこの物語のこたえとしては、最後のローズの「おかえりなさい」が全てだったのではないかなぁ、と夢見がちな私は思います。おかえりと言ってくれる人を見つけたから、帰ってこられる場所を見つけたから、エディは生きている。私はそう思いました。ラストシーン、すがるようにローズに抱きつくエディと、そんな彼を包み込むようなローズの姿がとても印象的で、これから続く日常がエディとローズにとって苦悩の日々になることは間違いないけれど、そこに希望が見えたので二人の未来を信じていけるなと思いました。

 

 

  そんな感じ。

 

 

 

 

 

  さて、、、

  もちろん今回も浜中文一くんが出ているからきっかけで観に行った舞台でしたが、本当に本当に作品が素敵すぎて、毎回素晴らしい作品に出演している文一くんはやっぱりかっこいいなー!!と思いました!!何より文ちゃんのジャーヘッドっぷり(髪型)が気合いを感じたよね!めっちゃリアル海兵隊員だった!

  ドッグファイトのダンスシーンでは最初はキメッキメな凛々しい表情で女性と踊っていたのに、最終的には舞い上がってスイッチ入っちゃった女性の方に翻弄されて好き放題されているフェクターの様子が「あまり利口ではない」感丸出しだった(笑)  

  あと、、、パンフレットでの文一くんのインタビューページの簡素さが “ザ・浜中文一” で痺れました。

 

   やらっちも初演時のインタビューを見ると「あまりにもエディと自分が正反対すぎて難しかった」と言っていましたが再演の今回、私には立派な調子に乗ったくそ野郎で、人として成長する素敵な若者で、初めて恋に落ちる初々しい青年で、戦争で変わってしまった悲しい帰還兵だったので、本当に役が染み込んでいて屋良くんの表情に注目せずにはいられませんでした。素晴らしかったです!

 

  そしてお芝居だけでなく、全員の歌とダンスが綺麗でパワフルで、初めて生で観る末澤くんのダンスもキレッキレだったし、特に言及せずにはいられないのが、中河内さんのステージ上から客席に向ける情熱が熱くて、力強い目線にすごく惹きつけられましたよ...。.....来年『ジャージー・ボーイズ』に出演されるらしい........。

 

  き、気になってなんかいないんだから!!!!!

 

  、、、でも、パンフレットでのキャストトークを読むとこの作品に対する彼の芝居の心構えがすごく心に刺さって、、今回初めましてだけどなんとなく薄々感じるのは、、きっとこの人、私の好きなタイプの人だろうなっていうことなんです。。だからこれ以上踏み出したら危険だと思う...(笑)

 

  あとローズとマーシーのトイレでのシーンもすごく好きだったのですが、男に期待もせず希望も持たず、うまく利用して生きるマーシーの、どこか悲しくはあるけれどたくましいかっこよさ、それが保坂知寿さんの歌声には込められていました。あの歌にも感動したな〜!!

 

   そしてそしてー!!我らの株式会社 応援屋の同僚、ひのあらたさんもたくさんの役で楽しませてくれました!またお会いできて嬉しかったです!!

 

 

 

  個人的に、死ぬまでにしたいことリストの中に “ブロードウェイで『Wicked』を観る” というのがあって、私にとってそれはなかなかハードルが高い目標なのですが、今回とっても素敵な楽曲が満載で、ブロードウェイ気分を十分に味わえて本当に嬉しくて楽しかったです。エマちゃんの低音が聴いていて心地よくて私は大好きでした!

  今年最後を素晴らしい作品で締められて私って本当に幸せー! 

  2017年ありがとう!!!

 

 

 

 

 

 

 

  てか、エディとマルちゃん(つまりは大ちゃんも)おんなじ誕生日なんだねー!

 

 

 

*1:もちろんローズが教えてくれているのだけれども、エディの言葉を借りてここではこう言わせていただきます

*2:2013年 村上語録より