5 Starsに魅せられて

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楽園とは

  前言撤回して、別の話題のブログを失礼いたしますすいません。そして長くなりますすいません。

 

 

 

  球春到来ですね。シーズンに入ってからの大谷翔平選手の活躍、本当にすごいですね。そして、上原浩治選手が日本球界、古巣巨人に戻ってきて今も素晴らしいピッチングみせてくれてることが最高に痺れます。彼の存在がまわりの環境にいい刺激を与えていくんだろうなぁと想像するとワクワクしますね。

 

  そんな野球の話題に事欠かない今日この頃、私も渋谷に野球を観に行きました。浜中文一くんもご出演の『Take me out 2018』を。 

 

  公式Twitterで流れてくる事前情報は、ミズノの社員さんに投球フォームやグローブの使い方などを教えてもらったこと、劇中で使う道具や物販のキャップもミズノ製だということ、そして座組の皆さんで野球をした、観に行ったなどの近況が盛りだくさんで、「野球の舞台」という印象を強く受け取っておりました。だもんで私も当日はスタジアムに野球を観に行くような気分でラフな格好をして劇場へと向かったのですが、、、、、全然想像とは違いました。『Take me out』は野球の話ではありませんでした。この作品の翻訳をされた小川絵梨子さんがパンフレットで書かれていたのと全く同じ状況に置かれていたあの日の私。(ブロードウェイ上演時、野球の話だからと気楽に観に行ったら、実際は違った、という話) 

 

 

  もちろんLGBT、人種問題などがテーマだということは知って行ったつもりだったけれども、まあ難しかった。本編が終わり、抱いた感想は「分からない...。」といった感じ。あの時間、あの劇場の中に発生した感情は自分が知っているもの、知らないもの、なんとも種類がいっぱいで、簡単に見えるものもあれば、奥底に隠れているものもあって、たくさん重なっていて入り混じっていて変化が激しくて、それはまぁ混沌とした空間だった。それでいて、最後はなんだか爽やかで、なんとなくあたたかい感じ。分からない。

  登場人物それぞれが異なる価値観の世界の中で、別のベクトルで動いていて、その人たちが今一緒にここにいる理由が野球で、、それでまとまることもできれば争うこともできる感じ。

 

 

  本編終了後、ぐるぐる頭と感情をめぐらせながら今観たばかりの作品に想いをよせている中でアフタートークが始まった。 ジャニーズJr.情報局(当時)で希望通りに取れたチケットの日程に、後からアフタートークという豪華なオプションが発表された時には渾身のガッツポーズ! 

  その日は演出の藤田俊太郎さんの司会で、玉置玲央さん、章平さん、栗原類さん、浜中文一さん(!)という4人の役者さんのお話を聞くことができました。

  

  

  演出の藤田さんは雰囲気も柔らかくて温かそうな人で、常に観ている側に解りやすいようにと進めてくださって、とにかくいい人オーラしかなかったのだけれども、その分、この人って稽古場でどんな顔する人なんだろー?っていうことが気になりました。ニコニコ厳しいこと言ったりするのかな??それとも一変して厳しい表情になったりするのかな??

  もう一人、特に印象的だったのが玉置玲央さんでした。スウェットパンツにビーサン姿(上はみんなお揃いのウインドブレーカー)で勢いよく登場したその様子や、サンダルを脱いで椅子の上にあぐらの片膝立て座り(居酒屋でよくしそうな座り方) をする様子が、ザ・演者!*1って感じで、まさにその世界で生きている人間オーラが凄かったです。インパクト強かった〜!

 

  誰一人として似た人間が登場しなかった『Take me out 2018』(いや、マルティネス、ロドリゲスは双子感あったかも...笑)、アフタートークではそれぞれの役紹介や、2016年の初演時との違い、各々の好きな台詞を語ってもらう内容となっておりました。

  劇中で登場人物11人のそれぞれの様子を見きることもできず、それぞれの心情を想像しきることもできず、いろいろと分からないことだらけだったけれども、あのアフタートークでは、演出家さんと役者さんが役についての解釈やそのキャラクターを落とし込んでいく過程を話してくれて、まるで稽古場での様子を垣間見れたような気がして、解釈のきっかけづくりをしてもらえたのがものすごく貴重でありがたい機会でした。

  それぞれどのタイミングで発した言葉だったかは記憶が定かではないので、以下、自分が興味深いと思った部分をふわっと記していきますが、正確さ諸々はご容赦いただければ幸いです。。もちろん明らかな間違いがあればご指摘くださいませ。

 

 

  物語渦中にいるスター選手ダレンの会計士、メイソンを演じた玉置くんは「これだけひとつ覚えていって欲しいのが、メイソンはアメリカ人だけどユダヤ人だっていうことです。」と教えてくれました。これは本当に大きな情報で、言われてみれば名前で気づける部分だったかもしれないけど、それまで全然気づかなかったのでそのバックグラウンドを知ってからだとまた深く感じるものが。でも唯一球場の外にいた人間だったこともあってか、“メイソンについて” が一番分からないことが多かったかもなぁ。

  玉置くんの印象に残った台詞であげてくれたものは、ストーリーテラーでもあるキッピーの「知っていることには耐えられるけど、知らないことには耐えられない。」でした。チームメイトがとった行動の理由を問いただすシーンの台詞なのですが、玉置くんは「許せるとかそういうことじゃなくて、もう『耐えること』前提なんだ...っていうのにはっとさせられた。」(←ほんとニュアンスです)とおっしゃっていました。確かに。

 

  類くん演じる実力抜群メンタル不鮮明なクローザー、シェーンは藤田さん曰く “イデオロギー無き差別主義者” 。複雑な生い立ちや育った地域の思想の元に、なんの配慮や躊躇いもなく同性愛についての嫌悪や差別を表現してしまう男。 

  自殺する高校生や馬など、特殊な役を演じてきた類くんは今回初めて青年男性の役を演じたとのこと。とはいえ、繊細かつ鮮烈なシェーンは決して普通ではない役でした。

  初演時のシェーンはもっと怒りの感情が常で、まわりと会話することも少なかったとか。それはそれで気になったけど、今回、自身の壮絶な生い立ちを語った後に急に笑い出して「笑えるだろう?」と至極本気で問うシェーンは異質すぎて、でもそんな彼だからこそ、どこか理解をしたくなるような虚しさを感じました。

  再演とはいえ藤田さんと意見を交わし合いながらまた新たなシェーンを生み出していったという類くん。以下、自分の記憶の正確さには本当に自信が無いのですが、彼の最後の「今後もいろんな役を通して “普通” というものを突き詰めていきたい」といった趣旨の言葉には “普通” の定義を考えさせられました。深い...。

 

  章平くん演じるダレンは黒人の母と白人の父を持つスーパースター選手。実力、人格、人気など全てを兼ね備えた彼の、自分はゲイであるというカミングアウトで物語は動き始める。一番切なかったのが彼がシャワーを浴びている時のシーンでした。神的存在スーパースラッガーの、数少ない人間らしいところが垣間見えたシーン。

  アフタートークでは熱を込めながら「毎公演毎公演、演じるごとに新たな課題や新たな発見が生まれて、その課題を日々クリアするという楽しさもあれば、逆にクリアできない楽しさもある。と発する章平くん。(そしてそんな彼の言葉に強く何度も頷く玉置くん。) その言葉の意味がまだまだ分からない自分は、なんて面白い考え方なんだ!!!と高揚した気分で、ワクワクしながら彼の言葉を受け取りました。うん、興味深い!

 

  文一くんのトッディはアンチ同性愛な保守的男。なんかよくアメリカのハイスクールドラマに出てきそうな典型的な嫌〜なアメフト選手ぽい感じ..? シェーンと違うのは、同性愛について明確に口にするのを躊躇うところだと思いました。彼がぼかしてダレンを非難したあの瞬間、私はダレンに多少の配慮があって言葉にできなかったのかと感じたのだけれども、考えてみるとトッディにとってはゲイだとか同性愛だとかいうことは口にするのも恥ずかしいことだったからなのかもな、、とも思ったり。結局はそういうところから抜け得ないタイプ的な?

 

  ちなみに、みなさんがそれぞれの役について熱く語る中、文一くんが役紹介で述べた最初の情報は、、「あの〜、僕が演じるトッディは、ライトを守っています。」

  ごく真面目な顔でそう発言する文ちゃんに会場は爆笑。爆笑する客席に文ちゃんおこ。(笑) 

  「みなさん笑ってますけど、僕は真剣にライト守ってますからね (ムッ)。←ザ・浜中文一なやつ

  でも実はめっちゃ気になってた。劇中ではピッチャー、キャッチャー、ショートとセンターしか明らかになっていなかったからね。一応みんなで野球をした時などに話し合って決めたという各キャラクターのポジション。うんうん、トッディ、ライトっぽい。少なくともファースト、サードではないなと思ってた。

 

  家に帰って開くパンフレット、早々のあらすじページには、

 

「一方、セカンドのトッディ・クーヴィッツドミニカ人選手のマルティネス、ロドリゲスらが...」の記載...。

  

 

  ・・・・・

 

 

 

  トッディ両方できるんだね!!!!!(笑)

 

 

 

  アフタートークでの文ちゃんはお笑い担当でまーボケ倒してめちゃめちゃ笑わせてくれたんだけど、でも私的に一番刺さった言葉って浜中文一さんのひとことで、でもそれはパンフレットにあったものなんですけど、とくに人に理解してもらおうとは思わないですかね。自分のことは自分だけが分かっていればいいと思います。」というもの。読んだ瞬間、いろんな意味で衝撃でした。あぁそうか、別に理解されることって必須では無いんだ、、と。

  同時に気づかされたことがあって、なんか、自分は今までずっと「自分は理解できるタイプの人間だ」とか「自分は他人にとっての理解者である」だとか、、そういう傲りが強い人間だったことに気づかされて、恥ずかしくなりました。反省。

  そしてそれらを踏まえていろいろ考えていたら、この『Take me out 2018』の自分なりの解釈が出てきて、それは、「理解できない」ということが作品のテーマに思えたのでした。

 

  劇中では自分の理解できないことに対して、激高する者、興味を持つ者、拒絶する者、嫌悪する者、理解しようとする者、蔑む者、気にしない者、馬鹿にする者、無視する者、気にはかけても関われずにいる者などなど、いろんな人間がいて、彼らが語りかけてくることは結局お互いがお互いで「理解できない」のが世の常だと、、だからそこに解決策も正解もなにも無いなと、改めて認識した作品でした。

  というのも、劇中でも、他人を理解したいと思っている人の、みんなの関係が円滑になるようにと思ってとった行動であっても結果的には身近な大事に思っている人を深く傷つけてしまったり、更にはそれが連鎖して誰かが命を落としてしまうところがあって、、でもそれって全然フィクションの中だけで起こり得ることではないと思ったから。良かれと思ったことがいい結果をもたらすとは限らない切なさが、最終的には「理解しきれない」結果なのかなぁと。そして “理解してもらえなかった” 側のダレンも、想いを寄せていたはずのデイビーにあそこまで激高した理由は、結局のところ、デイビーがあそこまで自分を拒絶できる男だと理解していなかったからだと感じたので。

  やっぱり、双方にとって「理解する」ことは本当に難しいことなんだなと。

 

  でも、それが救いようのない絶望だと感じたわけではなくて、それでも最後にはどこかの部分で共感し合えたり、想い合うことができるような人がいればまた一歩進んでいけるのかも、、とも思いました。
  例えばダレンにとってのメイ。ダレンが投げ出しそうになった野球という楽園を守るように強く説得してくれたメイ。野球をしているダレンの存在がメイにとっての救いであったからの言葉だとは思うけど、その彼の思いと言葉が、今度はダレンにとってのまたしゃんとしていられる理由になったように感じたので。

 

 

  そして、そんなことをごちゃごちゃと考えがちな私には、日本人ピッチャー、カワバタの終盤の言葉がとっても響きました。突き詰めれば女と男と林檎の木まで遡ってしまう話だけど、、時には考えずに、ただ広い草原の中にいる自分を想像するだけなんだね。。ふむふむ。

 

 

 

  味方くんのキッピーは鋭い視線や力強い声などとは対照に、彼の心優しさがなんとも不思議でした。彼もすごく繊細でしたよね。そして膨大な台詞量...!!

  小柳くんのジェイソン、訛りがめっちゃじょんだけ〜。藤田さん仕込みですかね?? どこか垢抜けない純朴なジェイソンは私的に一番親近感を持てる役でした。彼の鳴らすコーラの「プシュ!」っていう開栓音が地味にツボで...(笑) マクガワンも楽しみにしています! 

  陣内くん、、ゲーセン断ってごめんなさい。お花見デートありがとう。(←勝手な文ちゃん目線) 感情が思いっきり表に出る陽気で正直なマルティネス。ロドリゲスとのアミーゴ的なやつ、めっちゃ笑いました。結局なかよしかよっ!!

  Spiくん!めっちゃ言いたいのがSpiくんのおしりが一番野球選手っぽくてリアリティがありました!ということです! 親友にあんなにも残酷に暴言を吐けることが、彼の信心深さを物語っているように感じました。

  吉田健悟くんのロドリゲスで印象的だったのは、『Take Me Out to the Ball Game』が流れるシーンで、めっっっちゃ笑顔でベースボールしてたので思わずこっちも笑っちゃったんですよね〜! 真正面にいた文ちゃんが超ポーカーフェイスだからなおさらロドリゲスは本当に可愛いやつだなぁ〜!って思っちゃった。(ちなみに螻蛄に出てたんだね!観てみたけどサングラスの反則兄ちゃんかな?) 

  竪山くんのカワバタも重要な役で、あのチームの中ではマイノリティだったカワバタも、この世界の中ではマジョリティなのでは。気にはするけど関わる勇気が持てない、ひとまず自分の身近な世界を死守している人として。彼がひっそり自分のロッカーでお弁当食べ出したトコも好きだったー!

  田中茂弘さんのスキッパーはいかにもなチームの監督だと思いました。損得勘定無しにチームを率いることはできませんからね。そういう無情の象徴のような存在でもありました。

 

 

 

  でもでもやっぱり、それぞれの心情などまだまだ全然分からないことだらけ。今回の感想も初対面の第一印象に過ぎないのでいろんな解釈違いはあるかもしれないです。

  何度観て、何度新しい発見をしたとしても理解しきれない作品のように感じます。そこが面白い作品だと。(ん...?そういうことか!?)  

 

 

 

  最後に、藤田さんがアフタートーク「演劇は裏切らない」というような言葉を言っていたんだけれども、私はその言葉もまだまだ分かっていなくて、その時はすごく不思議に、「そうなんだ〜...。」って聴いていて、、でもやっぱりその言葉の意味を知りたくて、どうしても気になってしまっているから、そんな気持ちが今後も私を劇場に『Take me out』するような気がしています。今回も唯一無二な素敵な作品を観れたことが本当に嬉く思います。 Thank you Empires!

 

 

 

 

 

*1:演出などもされているそうです